雨の日は傘を回そう
科学は常識の延長ではない.
たぶん,そのいちばん身近な例はニュートン力学だろう.摩擦だらけのこの地上の世界で,力が加速度に比例し,力の加わっていない物体はそのままの速度で直進するのが本来の姿,などどはゆめゆめ思い付くことではない.
ニュートン力学を体で感じてもらうにはどうすればいいか.大昔に看護学校で物理の授業をしたときは,ドライアイスを配ってみた.ご存知の通り,ドライアイスは摩擦がなくてよく滑る.これで「力の加わっていない物体は等速直線運動をする」を実感してもらおうというのである.結果は,みんなで遊びだして大騒ぎになり,収拾がつかなくなったけれどorz
いまいちばんお気に入りの例は,傘回しである.雨の日に,傘を柄の回りにぐるぐる回したときに,骨の先端についた水滴の飛ぶ様子を観察してみる.さて,飛ぶ方向はA,B,Cのどれか,というのが設問である.
かなり多くの人が間違えるみたいで,やってみても自分の目が信じられないという人もいる.答えは自分で試してみてほしいが,よほど強風でもない限り,A,B,Cのうちで「真空で無重力の状態でニュートンの運動法則から期待される方向」に見事に飛ぶのが見られる.
この例は本で読んだのではなく,自分で気づいたのだが,実は自分の目がどうも信じられなくて,雨の中を歩いているとき,時々試してしまう,ニュートン力学はよく理解しているつもりなのだが,やっぱり妙な気がする.