ibaibabaibaiのサイエンスブログ

サイエンス中心の予定ですが,何を書くかわかりません.統計とかの話はこっちに書くつもり. https://sites.google.com/site/iwanamidatascience/memberspages/ibayukito  ツイッターは@ibaibabaibai

2015-01-01から1年間の記事一覧

光学の初歩はけっこう面白い

なんでこんなことになったのだぁ これから数回続けて光学ネタになるが,レンズブログになったわけではないし,特別にこの方面が得意というわけでもない.もとはといえば,友人にカメラの絞りと被写界深度の関係について聞かれたのが発端である.「せっかく図…

個別性を選ぶということ ー プリーモ・レーヴィとオリヴァー・サックス 

プリーモ・レーヴィと「周期律」 プリーモ・レーヴィの「周期律」が本棚に見当たらない。どこにやったのか憶えていないが,アマゾンで調べたら,もう新本は買えないみたいだ。「周期律」は大変風変わりな短編小説集である。作者は本職の化学者で、各作品ごと…

ワトソン君よりアントン君 - 揺らぐタンパク像

ワトソン君よりアントン君 「アントン」の話を初めて聞いたときには,これはもう世間で有名なもので,自分は話題に出遅れているのだと思った.ところが科学や技術に興味がありそうな人に話してみると,意外とみんな知らない.その代わりに話題に出てくるのは…

気象の話の補足

お仕事のほうの記事がウェブに出ました.気候変動リスク情報創生プログラム:響き合う人とデータ―統数研プロジェクト:統計数理研究所取材記事といっても内部で作成した広報資料です. 私は他の3人と違って実行部隊ではないですが,少しだけアイディアを出…

動的平衡なんて怖くない

動的平衡 福岡伸一の「動的平衡」という本が話題になったのは,もうだいぶ前のような気がする.「あれ~なんかおかしいなあ,動的平衡って別に生物に限らない筈だよねー」とか思ってるうちにブームになり,「文句いおうかどうしようか」と空気を読んでいるう…

5次方程式の解をぐるぐる動かす

続編です 前回「平方根の日付変更線」の続編である.こんどの話には元ネタがあるが,それは後で紹介する.ただし「ニュートン法で解析接続する」「それをマウスでカチカチ実演する」というあたりはオリジナルである. こんどは5次方程式 前回は平方根,すな…

平方根の日付変更線

複素数をなめたらあかんで 複素関数論のテキストを持って歩いていたら,情報系の研究者に「複素数って何に役立つんですか」みたいなことを聞かれた.心外である.2重に間違っているではないか. まず,複素数は役に立つ.たとえば,量子力学以降の自然記述…

ローレンツは気象学者の敵じゃなかったみたいだ

少し前から創生プロジェクトという未来の気候の予測に関する巨大プロジェクトの隅のスミにいる.メンバーはほぼ全員が気象とか防災の専門家だが,試しに統計科学の人もいれてみようということで,私の属している研究所から4人だけはいっている.気象の人たち…

プリオン補足

専門性の高い方からと思われるブックマークのコメントに>正常に畳まれかかった蛋白質が、凝集体の端に引っかかって解かれながらくっついて一部になっていくイメージで、「自己増殖」とか「感染」とかいう感じではない。シート状に畳む方が互いにくっつき易…

「雨の日は傘を回そう」の答

そういえば「雨の日は傘を回そう」の答を書くのを忘れていた.傘を離れた雨粒は図のCの方向,すなわち接線方向の前方に飛ぶのである.「力の働かない物体の速度は一定」というニュートンの法則の通りである.もちろん空気の抵抗はあるが,それは理想的なCと…

プリオンなんて嘘だと思ってた

はじめはプリオンなんて信じなかった.だって話が出来過ぎではないか.たんぱく質の1次元配列は同じでも,その折りたたみの形状が複数ある.みんながAという折りたたみ方をしているときに,それよりちょっとだけ安定なBという形状のものを入れると,それが…

利己的な毒キノコ

生物の話もいろいろあるが「群淘汰は起こりにくい」という原理は知っておいて損はないと思う.これによって,ずいぶん多くの疑わしい説明から逃れることができる.具体例として猛毒キノコを考えてみよう.毒で受動的に身を守ることの問題点は,毒が廻ったこ…

雨の日は傘を回そう

科学は常識の延長ではない.たぶん,そのいちばん身近な例はニュートン力学だろう.摩擦だらけのこの地上の世界で,力が加速度に比例し,力の加わっていない物体はそのままの速度で直進するのが本来の姿,などどはゆめゆめ思い付くことではない.ニュートン…