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ibaibabaibaiのサイエンスブログ

サイエンス中心の予定ですが,何を書くかわかりません.統計とかの話はこっちに書くつもり. https://sites.google.com/site/iwanamidatascience/memberspages/ibayukito  ツイッターは@ibaibabaibai

一過性全健忘(TGA)体験記 /補遺

そろそろ平常運転に戻りますが,沢山の方に読んで頂いたので,少し補足をします.

Q 記事へのコメントで意外だったのは?

「頭を打ってTGAのような症状になったことがある」という方が複数いらっしゃいましたが,それはあまり考えたことがありませんでした.「脳振盪」というのは受傷直前のことを忘れるのだろうと思っていましたが「外傷後健忘」という言葉があるのですね.
http://www.nayaclinic.com/bias/factsheets/post_traumatic_amnesia.pdf

スキー場で発症されてTGAと診断された方々の多くには頭部の打撲のエピソードはなさそうですが,軽い打撲でしかも発症まで数分空いていれば気づかないことはあるかもしれません.

自分の場合は,問診で頭部の打撲について聞かれた記憶があまりないのですが,忘れているだけで,実際には確認されたのかもしれません.ジムですから,気づかないうちに転倒,という可能性は絶無ではないと思いますが,画像所見を含めておそらく違うとのではないかと.

Q 書いてよかったことは?

15%ほどですが再発する方がいるということです.ひとりでハイキングとかしているときに「やっ」と力を入れた途端にまたなったら危険だなあ,と思ってたのですが,つい忘れていました.これを書いて思い出しました.

Q TGAに似た症状なら,自宅で様子を見ても良いということでしょうか?

お医者さんに相談せずに勝手に自己診断しているように思えるかもしれませんが,実際には翌日の昼には友人の医師のコメントを頂いていますし,書いていませんが,その方に電話で連絡を取ったりもしています.また自己判断の部分でも,熱や頭痛の有無,手足の動きや呂律に問題ないこと,彼女からみた回復の様子,などを慎重にチェックしています.

小さな症状の有無で緊急性が高いケースもありますから,基本的にはすぐ受診されるようにお願いします.救急では科を指定する必要は必ずしもないと思いますが,時間が経ってからの場合は神経内科です.

医師でない自分が書いてよいのか少し迷いますが,注意すべき鑑別診断について以下簡単に書きます.

a.一過性脳虚血発作(TIA)

一瞬意識がなくなる,手足に少しでもまひがある,呂律がまわらなくなる,などの症状がある場合にはTGAの範疇には入らない可能性が高いと思います.「日本語がしゃべれなくなった」というコメントがありましたが,これも怪しいような.脳梗塞が原因でこうしたことが起きた場合でも,短時間で自然にもとに戻ることがあります(TIAといいます).

こうした場合には再発して大事になる可能性があるので,いま平気でも,必ず受診してください.心臓に原因があって,そこから血栓が飛ぶタイプ(心原性脳梗塞)は特に危険で,まわりにも(2回目3回目で)大事になった方がいます.実は母もこれが原因で9年前になくなりました.発作的に不整脈が出る場合に,それが危険な種類のものかどうかは,そのときに心電図をとらないとわからないので,患者のほうから医師に申告する必要があります.私もブログのエピソードがあって少ししてから,念のために24時間心電図を取りました.

b.てんかん

一般に記憶の障害や意識の変容をともなうことがあるようです.普通にイメージするようなてんかん発作以外に「複雑部分発作」という変わった発作もあります.いままでなかったてんかん発作が起きた場合には,脳腫瘍などが隠れていることもあるので,検査したほうがよいです.TGAの画像上の証拠が欲しかったのは,ひとつにはてんかんとの鑑別が頭にありました.

c.脳炎

頻度は高くないかもしれませんが,緊急性という意味で心配なのは脳炎です.ヘルペスウィルスなどによる側頭葉脳炎は重い障害や死亡につながる怖い病気ですが,精神病のような症状で発症することもあります.抗ウイルス剤による早期治療が意味を持つので,怪しければ迷わず病院に行くのがとても重要です.「側頭葉脳炎」「ヘルペス脳炎」などで検索すると情報が得られますが.本当に大変なようです.ブログのエピソードのときも,もう一方の友人に発熱や頭痛があればすぐ救急で受診するように注意されました.おかしくなってしまったら受診できないので,一人暮らしの場合は特に注意が必要と思います.

Q もっと深刻な海馬損傷にはどういう例がある?

気軽に語れるようなことではないですが,たとえば,ある日突然に気分が悪くなって立ち上がれなくなり,そのあと記憶障害が回復しなくなってしまった,という例が文献にありました.まず脳底動脈系の梗塞が起き,おそらくそのままでは命にかかわる状態だったのが自然に外れて,壊れた血栓が海馬周辺の血管に詰まった,ということのようです.心臓から血栓が飛んだ可能性が大きいらしい.リハビリしようとしても自分の状態を忘れてしまうのでうまくいかないようで,大変なことだと思います.
http://tokyodesignroom.jp/test/pdf/2003/page114.pdf

有名な物理学者のランダウは晩年に交通事故で重傷を負いましたが,一説には両側の海馬損傷があったともいわれます.一方で事故後も1/sin xの不定積分はできた(息子か誰かができないのを嘆いていた)という話もありますが,矛盾はしないもしれません.

余談ですが,その話を聞いて1/sin xの不定積分をやってみたら結構難しかったです.

Q 海馬以外に同じようなピンポイントの損傷が起きたらどうなるんでしょう?

はっきりわかりませんが,海馬(あるいは海馬のCA1領域?)には固有の脆弱性があると聞いたことがあるように思います.組織特有の性質とか,そこに行く血管が長いとか,あるいは,それらいくつかの合わせ技とかでしょうか.もしそうだとすると,脳のどこででも起きることではないのかもしれません.

もし仮に,海馬でなく扁桃体で起きたら,と思うと怖いですね.人格や好き嫌い,怒りの感情といったものが突然一変して,しばらくして何事もなかったように戻る.記憶はあるけれど,自分の感情が説明できない.脳科学的悪夢です.

Q「一週間フレンズ」知らなかったのですか?

「一週間フレンズ」も「メメント」も知りませんでした.「一週間フレンズ」は題名から「友達のいない子が一週間だけ契約して友人になってもらう話」だと勝手に思い込んでいました.

フィクションの記憶障害というと,多数派は「覚えられない」ほうではなく「過去を忘れる」ほうだと思います.読んでいないのですが,事例を多数集めた「フィクションの中の記憶喪失」という本があります.

Q ドーナツの種類が同じだったかどうか気になります

彼女にはてなブックマークのコメントを読んでもらったら,「私もそこが知りたい」という返事がありました.しかし,いまとなっては知るすべがありません.

Q 面白い彼女さんですね

はい.

彼女「はるさめの味噌汁を作った」
私 「そんな料理はない」
彼女「私が考えた」

彼女「家庭に入るという選択もありますね」
私 「え? えええええっと」
彼女「碇ユイを知らんのか!」

彼女「ああ,あそこでは博覧会があったんや」
私 「いつごろ?」
彼女「えーと,明治かな?」

普通の事務職の人ですが,某巨大図書館に入り浸ってあらゆる本を読んでるみたいです.一時は新聞を熱心に読むあまり,どんどん遅れていって,話題が1か月前のニュースになるんで困りました.

Q 最近も仲良くしてますか? 最新の話題は?

はい.クリスマスを一緒に過ごしましたが,お互いに相手が「空想上の親友」なんじゃないかと疑っていることが判明.問題はどっちが実在の人物かということですね.

最新の話題は・・ 新聞広告を集めた本を読んでるそうで(その前は石仏事典だった)「三大寄生虫病に効く薬の広告」とかで,私が見事に(ラスボス的存在の)十二指腸虫を言い当てたので盛り上がりました.今日は時計草の実のなり方と雪虫の生態かな.

Q すぐ返事をくれた友人のお医者さんはどんな人ですか?

理論脳科学志望なのですが,なんか数学の天才っぽい人で,いつもヒルベルト空間とかコホモロジーとかいってます.「アーベル圏とかもやはり勉強しておいたほうがいいですかね」とかマジでいってましたが,目指すは汎宇宙数理脳科学か. 実はすごく臨床のお医者さんにも向いているみたいなので,ある意味惜しいかも.今回の件でもほかでもお世話になっています.

Q 1日で2万PVとかあるとどういう感じですか?

一瞬だけ,もぎけんや福岡伸一になったような気がしますw

前にプリオンについて書いて以来ですが,3度目はなさそうな気もします.

専門分野以外の科学解説やエッセイの注文がなかなか来ないので,練習とアピールを兼ねてはじめたブログです.「彼女の観察日記」にしたほうがアクセス数は増えそうですが,地道にやりたいと思います.